「ぼくはおうさま」

玉子焼きが好きで、お姫様が好きで、遊ぶのが好きで、大臣にわがまま放題言う王様。洗ってない顔を「洗った」と嘘ついて、勉強が嫌いで、注射が嫌いで、食べたくない野菜は捨ててしまう王様。誰もが当たり前に「美しいけれど儚いものである」と知っているのに、割れないシャボン玉を欲しがる王様。そしてそのキレイなものを、自分1人だけでなく皆に分けてあげたいと願う王様。
子供の頃に図書館で借りた中で一番古い記憶の本。和歌山静子さんのぶっとい線画の挿絵が可愛くて印象的で。当時は「どうしてお姫様が好きなのに『王子様』じゃなくて『王様』なんだろう?」と不思議に思ったものですが、大人になった今なら分かる、全ての子供は「王様」だから。そして今こうして列挙してみると、その「子供」の象徴である王様の何とヨコヤマ的なことか(微笑)。
先日の新聞で、作者・寺村輝夫さんの訃報を知りました。ご冥福をお祈りします。